理事長雑感⑥ 「梅切らぬバカ」とグループホーム

 8050問題や老障介護が課題となっている昨今ですが、先日「梅切らぬバカ」という映画をDVDで見ました。高齢の母親(加賀まりこ)と自閉症・知的障害のある50歳の息子(塚地武雅)が地域社会の中で生きていく姿を日常的に描いた作品です。母の老いが進むなかで「親なき後」の暮らしをどうするかを考え、母親は息子をグループホームに入れることを決意します。グループホームに入ってからのネタバレはしませんが、「親と子の絆」、「地域社会・人々との関わり」そして「障害者の自立の難しさと希望」などについて考えさせられました。

 作品の中では、地域社会におけるグループホームの状況を住民の反対運動が起こる場面も取り入れて、地域にグループホームがどのように根付いていくか、地域住民との関わりの難しさと重要さについても思いを馳せざるを得ませんでした。

 知的障害者のある息子に対する対応という点では、息子の毎日の髭剃りや爪切りを母親がやってあげるとか、時間通りに行動する息子のルーティンに付き合っているなど、本来はもっと出来る力があるであろうことを甘やかせて育ててきたのではないかと思われるシーンもあります。もちろんこれも母親の愛情の表れであり、そうやって息子に関わることの嬉しさもあるのだろうと思います。

 なお、タイトルにある「梅の木」は、息子にとってはいなくなった父親の想いを感じる安心できる象徴であり、母親にとっては夫がいなくなってしまった後の生活の中の葛藤を映すような存在です。家庭の歴史を抱える梅の木であり、その木を切るか切らないかという小さな選択も、親子の生き方や地域とのつながりを反映して、シンボリックです。

 障害のある子どもが成人した後の将来の生活は、家族だけで抱え込むのではなく、地域と福祉が結びつき、本人が安心して生活できる場所をどうつくるかという問題です。この映画は、グループホームの存在意義と、地域との橋渡し役としての役割についても改めて考えさせてくれる作品でした。

 ちなみに、このDVDは宇都宮市中央図書館にも所蔵されていますし、ビデオ屋さんにもあるようです。是非鑑賞してみてください。 (2025.9.15記)

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