理事長雑感⑭  成年後見人制度の改革と親亡き後問題

 現行の成年後見制度は、判断能力が回復しない限り終了できない(実質的に終身)ことや、後見人の権限が包括的であることなど、多くの課題を抱えています。特に知的障害のある方にとっては使い勝手が必ずしも良いとは言えず、成年後見制度の利用者は約25万人であり、そのうち知的障害者は約1割(2万人台)にとどまっています。

 現在、成年後見制度は2026年の民法改正を軸に「25年ぶりの大改革」ともいわれる見直しが進められています。今年度の通常国会に改正案が提出される予定で、施行は2027年から2028年頃になる見込みです。では、制度がどのように変わるのか、主なポイントを見てみましょう。

 1点目は、「後見・保佐・補助」の3類型が見直され、必要な権限を個別に付与する“オーダーメイド型”の支援へと移行する方向にあることです。

 2点目は、終身性の見直しです。目的が達成された場合には「途中終了」が可能となります。例えば、知的障害のある方の親が亡くなり、遺産分割が終了した後も本人が亡くなるまで後見人が関与し続けるといった現制度の課題が改善されることが期待されます。

 3点目は、後見人(補助人)の権限が「必要な範囲」に限定されることです。遺産分割、不動産売却、重要な契約行為などについて、個別に権限設定ができるようになり、本人の生活の自由度が高まると考えられています。

 4点目は、本人の状況や支援ニーズの変化に応じて、後見人の交代がしやすくなる点です。また、これまで主に財産額を基準としていた報酬体系も見直され、業務内容や負担に応じた仕組みに変わる見通しです。

 では、このような制度改革によって、親亡き後問題は解決し、知的障害のある本人の生活は十分に安心できるものになるのでしょうか。必ずしもそうとは言えません。成年後見制度は主として本人の財産を保護する仕組みであり、本人の生活そのものを保障するものではないからです。

 本人の思いや意思を尊重した生活設計を実現するためには、別の仕組みが必要です。それが本人中心主義プログラムであり、それに基づく個別の支援計画です。サポートファイルや個別支援計画は、現在の生活を支えるうえで重要な役割を果たしますが、将来にわたる生活全体を見通した設計までは十分とは言えません。

 今後は、本人の想い・願い・意思を丁寧に引き出し、それをもとに将来の生活設計図を描いていくことが求められます。なお、本人中心主義プログラムについては、改めて詳しく述べたいと思います。

                                                       (2026.5.1記)

\ 最新情報をチェック /